声の専門診療
ボイスクリニックの診療について
「声」は会話やコミュニケーションをするための重要な機能です。日常生活はもちろんのこと、仕事においても声の不調は大きな問題になります。
また、精巧な楽器でもあり、発声を研鑽することで、歌ったり、色々な声色を作り出すことが可能です。芸術的に使用されている方々にとっては、きわめて繊細な感覚をお持ちだと思います。
私は、東京医科大学耳鼻咽喉科 音声外来、以前の三田病院 声の相談・治療センター、山王病院 東京ボイスセンターなどで10年以上継続的に音声の診療や研究・音声手術を行い、音声言語医学会の評議員として音声医学を学んで参りました。
50種類以上にのぼる声の疾患ごとに、診断から治療・手術まで行います。言語聴覚士と協働し、ご職業に応じたアドバイスやスケジュール調整、治療選択を説明しご提案いたします。
・木曜は東京医大と東京ボイスセンターで外来や手術を担当しております。
・当クリニック内で施行できない手術に関しては、提携病院(山王病院東京ボイスセンター、豊村医院耳鼻咽喉科 音声・聴覚メディカルケア)に出張して行っております。
~音声診療の流れ~
初めにiPad問診を使用して、声の症状を事前に把握させて頂きます。診察では、耳・鼻・のどの一般診察に加えて、声帯を内視鏡で詳しく診察します。
診断したうえでご説明を行い、必要に応じて声の検査、音声専門の言語聴覚士による言語療法・音声リハビリを行います。また、各種薬剤の声帯注入療法や手術のご提案もいたします。
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詳細に声や喉に関連する項目をお伺いしております。
声の検査
喉頭内視鏡・ストロボスコピー検査
・声帯などを内視鏡で詳細に診察いたします
・口や鼻から軟性の内視鏡を挿入します
・胃カメラなどよりも細い内視鏡です
・鼻腔は局所麻酔薬で麻酔します
~喉頭(声帯)の内視鏡~
声帯の振動・閉鎖の程度や微小病変の精査、のどの動きや左右差を観察するための検査です。
声の症状の原因を特定する場合には、高音や低音、小声や大声など種々の発声をして頂くことがあります。「オエッ」となるような反射がつよい場合には、麻酔を追加して行いますので、安心して検査を受けられます。
~喉頭ストロボスコピー検査~
声の診療には必須の検査です。声の周波数を検知して、閃光(ストロボ)を照射することで、発声中の声帯振動をスローモーション像として観察できます。
これを種々の発声条件で観察することにより、声帯波動の左右対称性・規則性、声帯の上面から下面までの微小な病変まで検出することができます。
声の疾患について
声の疾患には、大別して以下の3種類あります。これらが重複して起きている場合もあります。
- ①「楽器としての声帯」の構造(声帯表面や声帯の筋肉)に異常が見られる。
②「楽器としての声帯」の構造が正常であるものの、「声帯の動き」に異常が見られる。
③「楽器としての声帯」の構造が正常範囲で、「声帯の動き」も正常範囲だが、声の不調を伴う。
①「楽器としての声帯」の構造(声帯表面や声帯の筋肉)に異常が見られる場合
「楽器としての声帯」の構造(声帯表面や声帯の筋肉)に異常が見られるものに以下のようなものがあります。 それぞれに特徴や治療法が異なり、2種類以上が重複していることも多くあります。病変の場所(声帯の上下前後)や、病変の大きさによっても症状が変わってきます。
②「楽器としての声帯」の構造が正常であるものの、「声帯の動き」に異常が見られる場合
「楽器としての声帯」の構造(声帯表面や声帯の筋肉)が正常であるものの、「声帯の動き」に異常が見られる疾患には以下のようなものがあります。 思ったように声帯を動かせないというものですが、動き過ぎる場合(声のつまり、とぎれ、ふるえ)、動かない場合(声が弱い、声が抜ける、息がもれる)があります。さらにこれらの原因は声帯を動かす反回神経の一部の麻痺から、脳のレベルでの調節障害まで多様です。情動やストレスなどの心因が関係する疾患と、あまり関連のないものがあります。
③「楽器としての声帯」の構造が正常範囲で、「声帯の動き」も正常範囲だが、声の不調を伴う場合
「楽器としての声帯」の構造(声帯表面や声帯の筋肉)が正常範囲で、「声帯の動き」も正常範囲ではあるが、声の高さや音色に悩みを持つ場合や、発音の問題、一定の環境下において悩みが生じる疾患には以下のようなものがあります。※声の症状について詳しくはこちら
音声障害の治療
声に関する様々な説明やメンテナンス、発声を取り巻く習慣や環境の調整、声のリハビリや発声や発音練習による治療を行います。
治療の前には、発症様式を確認し、発声状態を評価し、声の検査などを行います。
局所麻酔or全身麻酔?、入院or日帰り?など、施行する施設の金額や特徴の詳細は、こちらのページをご覧ください。
※歌唱などの精緻な音声使用を行う患者様や、病変が大きい声帯ポリープなど、手術の精密さが要求される場合は、全身麻酔をお勧めすることがあります。
※手術は院長が行いますが、他院での手術を御希望される場合にはご紹介もいたします。
鼻咽腔“Bi-inkuu”の頭文字のBを由来とする通称で、上咽頭擦過療法(Epipharyngeal abrasive therapy: EAT)のことです。
上咽頭(Bスポット)という部分(鼻の奥・のどの上方)が腫れている場合に、消毒液をつけた綿棒などを擦過して腫れを消退させます。また、この部分の炎症は様々な症状に関与するという説もありますが、詳細はまだ判っていません。内視鏡で上咽頭の炎症部位を見ながら正確に行う場合には、endoscopic EAT: eEATと呼ばれます。
~どんな声やのど症状に効くのか?~
声が響かない・鼻に抜けない共鳴不良や、鼻づまり声(閉鼻声)など、同部位の痛みや違和感、後鼻漏では、改善する方が多いため併用をお勧めすることがあります。
~当院でのBスポット療法のながれ~
・炎症が強いときに効果的ですが、痛みや出血も伴うため、患者様と御相談しながら刺激量や刺激法を調整します。
・1~2回でも明らかに改善することがあります。
・標準的には、月に数回程度で8回を目安に行います。
・関連する鼻アレルギーや胃酸逆流も確認し、同時に加療します。
・上咽頭の嚢胞や癒着の開放・排膿、病変の切除術なども可能です。